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途端、キリリとした顔をしたギヨームの案内で近くの部屋へと案内され、そこにあるソファーに下ろされた。
「腫れてきてるね。今水を汲んでくる。暫く歩くのに苦労すると思う。杖も持ってくる」
「頼む」
テキパキと足を診て動くギヨームはとても頼もしく見える。その側にいるアベルは腕を組んだまま、ジッと白雪姫を見下ろしていた。
「お前、この国の姫か」
「え?」
「こんな暮らしだが、町とまったく関わりがないわけじゃない。白雪姫、この国だけじゃなく隣国でも有名な美姫の名だ」
アベルの言葉に、白雪姫は俯き加減に頷いた。
手は硬く握られてドレスのスカートに皺を作る。そして目には、今にも溢れそうな涙が浮かんでいた。
「何があった」
「……義母さまと、折り合いが悪くて」
そう、ぽつんと呟く。彼女にしたら、それ以上がないのだ。
白雪姫の母は彼女を産んで暫くで亡くなった。
それからずっと後妻を取らなかった父が、最近になって若い後妻を取ったのだ。
この後妻は自分の美貌に自信を持っているらしく、何かと白雪姫を目の敵にしていたのだが、まさか殺そうとしていたとまでは思わなかったのだ。
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