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「私は眠過ぎて顔も上げられない状態なの。ほっときなさい。」
「えー…。あ、でも誰かこっちに来るぞ。」
「え!ウソ!?」
こんな所を見られたらまた昔みたいにコイツとデキてるというしょーもない噂を流される!どこかに隠れようと思いガバッと顔を上げた。
「うっそー☆」
目の前に満面の笑みと両の手のひら。私はこの時ほど人を殺したいと思ったことはない。
「リョースケ。歯、食いしばりな。」
「うお!?暴力反対!断固阻止!!!!!」
手を胸の前でクロスさせ、謎の構えをとるリョースケ。アホっぽい…。
呆れて力を込めていた手のひらから力を抜いた。
「で、これは一体何のまねかしら?」
私は今立ったままリョースケに抱きしめられている。身長差があるため、私の頭はリョースケの胸の位置になるのだが。先程のくだらない茶番劇が終わったと思ったら、リョースケは私の顔をまじまじとみていきなり抱きしめてきた。全くもって意味が分からない。
異性に抱きしめられて何も感じないほど鉄の心ではないが、相手は幼なじみである。もはや家族どうぜんの相手にトキメキを感じることはない。というか感じられない。
「俺が思うに、人間って慣れるまでが気合いだと思うんだ。」
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