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「はぁ…?」
なんかいきなり語り出したぞコイツ。しかもこの状態の説明は無しか!
「最初は慣れなくて辛くて不安でも、慣れてしまえばなんとかなるし、何も感じなくなる。
でも、慣れちゃいけないものもあると思うんだ。」
「へぇー。例えば?」
「一人で泣くこと。」
「……。」
「別に全部語ってくれなくてもいい。ただ、泣いてる姿を誰かに見せてあげないと『アイツは何しても平気だ』って思われる。一人で泣くことに慣れたらきっと人に頼るのが苦手になる。そうしたら全てを自分で抱え込んで潰れてしまうから。」
そう言ったリョースケの顔を恐る恐る見上げる。
「だから一人で泣いたらダメだ。」
下から覗き込んだリョースケの目はとても真っ直ぐで真剣だった。その目を見たらまた泣き出しそうになってしまって、顔をゆっくりとリョースケの胸に戻した。
「何言ってんだか……。まるで私が泣いてるみたいじゃん。」
「そうか、そう言うならこちらも強硬手段をとろう。」
え?と思った瞬間にはリョースケに両頬を思い切り抓られていた。
「いだだだだだだ!!!!!いひゃいわあほう!!!!!」
早く離せとリョースケの腕を叩き訴える。
「よし。」
何がよしだ!力いっぱい抓りやがって!!
「泣いたな。」
そう言いながら満足そうに笑うリョースケ。
「そりゃ痛かったら自然に涙はでるでしょ?!」
「でも俺の前で泣いた。慣れるまではそれでいいんだよ。」
何だか胸が熱くなった。コイツほんとに意味が分からない。でも……
「ほら!後ろ向いてリョースケ!」
「え?なに?」
両手でグイグイ押してリョースケに背中を向けさせ座らせる。その後に座り、おでこをリョースケの背中にくっつけた。
「……どうした?」とんでもなく優しい声色。なんだかんだでこいつの事を拒否できないのは、この優しい人柄のせいだと思う。結局甘えてしまう。
「……慣れるまでは…これでいいんでしょ?だから、私が素直になれるまでちょっと待ってて……」
そう言った私の頬に暖かい雫がこぼれた。
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