5章 透明な痛み、冬の嵐

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5章 透明な痛み、冬の嵐

 H市までは町までバスで20分、列車で1時間の距離だ。ちょっとした旅行になってしまうその距離を、玲奈に会いに行くために列車に揺られながら、望実は今までのことを思い起こしていた。  直輝の親切に甘えすぎていたのかもしれない。  望実は同級生との仲は良かったから、学校の外の交友にまでは気が回っていなかった。ヴィレッジガーデンに行けば奈菜とは話はするものの、それ以上はどう付き合えばいいのか分からなかったのだ。  H市にいた頃は学校と塾との往復で、仲の良い友達は何人かいればそれだけで世界が成立していた。たとえ一人だったとしても遊ぶ場所もあって退屈はしない。猫のような生き方が許されるのが都会だった。  けれど子供がほとんどいないくすのき村は、まったく違うシステムで動いているのだ。  村人同士が兄弟姉妹のように分け隔てなく付き合う、密度の高い関係性の中で、村に溶け込もうと努力するあまり、望実は奈菜たちの保っていた村のバランスを壊してしまったのだった。  終わってしまった恋を、親しくもないのに蒸し返される行為に腹が立たない人間はいないだろう。  ……遥には相談できないと思った。  年上の遥が口を挟めば、簡単に解決するのかもしれない。遥は望実の味方をする、それ位は分かっていた。けれどそれではあまりにも一方的過ぎる、悪いのは彼女たちではないのだ。
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