5章 透明な痛み、冬の嵐

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「あの麓に、くすのき村があるんだね……」 「でしょ。ここからでもよく見えるんだからさ」  玲奈は励ますように、後ろから望実の肩を抱いた。 「私、見守ってるから。いつでも甘えていいんだよ」 「玲奈ちゃん……」  望実は肩に置かれた彼女の手を握りしめる。忘れていた。都会の空気は冷りついてみえるけど、心に触れればストーブみたいに暖かいんだ、こんなにも……。  展望台からの眺めを楽しんだ後、二人はエレベーターで降りて、以前から行こうねと約束していたカフェに入った。休日で30分待ちだったけれど、色とりどりのスイーツメニューを見ていると、食べるのが楽しみで仕方がない。 「遥さん、来たいって言うだろうな」 「今度はみんなで来ない? 一緒に遊ぼうよ」 「でも……」  奈菜の顔が浮かんで、望実はためらった。これ以上、古城姉弟と仲良くすれば村の友達関係を壊すような事になってしまうかもしれない。  けれど、玲奈は彼女らしいあっさりした口調で言った。 「人を好きになるのに、時間なんて関係ないよ」 玲奈の手が、望実の手を優しく握る。 「距離だって、全然問題ない」 「玲奈ちゃん……」 「みんなもう、友達なんだよ?」  お互いの絡めた指に、力がこもる。そういえば、彼女は望実が引っ越していった時も涙は見せなかった。  玲奈のプライドは、都会で隠し持った孤独の裏返しかもしれない。  人波に押し流されても二本の脚でしっかり踏ん張れる、望実の親友はそんな逞しさを持つ女の子だった。
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