5章 透明な痛み、冬の嵐

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 次のヴィレッジガーデンではクリスマス会についての会議だったが、そこに奈菜たちの姿はなかった。落胆する望実は考え込んだ様子の直輝を伺う。  唇をかみしめ難しい顔をする彼に、事の成り行きを問うべきか悩んだ。でも、このまま本当に奈菜たちが居場所を捨ててしまっては、彼女たち自身が傷つくだけだ。  バイトで忙しい12月、遥はヴィレッジガーデンを留守にしている。  望実が少年部を出ていくことも考えたけれど、やはり後味が悪い結末となるだろう。望実が分かっているのは、今やることをやらないと、もっとつらい事になるということだった。 「古城君、話があるんだけど」  最近何となくお互いよそよそしくなっていた所に喋りかけたせいか、直輝は驚いて周囲を見回す。それから望実の姿を認め息を大きく吐いた。 「芳崎か、どうしたんだ急に」 「奈菜さんのことで、ちょっと」 「ああ……」  望実と直輝は会合が終わった後、「寄るところがあるから」とみんなに別れを告げ、家とは反対側に歩き出した。  棚田の木陰に見つけたベンチに座り、改まったように二人して俯く。
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