5章 透明な痛み、冬の嵐

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 卵黄にも砂糖を加え、白っぽくなるまで泡立ててから、サラダ油と水を加え混ぜる。その中へ米粉を入れてゆく。レシピ通りに進んでゆくケーキ作りは、あれこれ語らいながら和気あいあいとしていた。  奈菜たちの調理台でも、少しずつ会話が戻っていた。  奈菜に合わせて、ヴィレッジガーデンをやめると言っていた彼女の友人たちは、やはり仲間のことが大事なのだろう。  望実がきちんと自分の意見を述べて引き留める姿を見て我に返ったらしく、奈菜を説得する方向に回ってくれたのは、非常にありがたいことだった。  微妙だった調理実習室の空気が、穏やかに変わっていく。  メレンゲと合わせ、ボールの底からさっくりと混ぜ合わせるとようやく生地が完成する。  ここまでの過程を失敗した者はなく、いよいよケーキを焼く段階に入る。生地を型に流し入れ空気を抜くと、予熱したオーブンの中へ型を置く。あとは焼き上がりを待つだけだ。  クリスマス会のために借りた教室では、今頃男子たちが準備しているはずだ。直輝はこちらの事を心配しているだろう。
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