5章 透明な痛み、冬の嵐

16/17
前へ
/101ページ
次へ
 準備がすべて整い昼食が終わると、冷ましたケーキを切り分けて皿に盛り、生クリームを盛り付ける。フルーツをあしらうと完成だ。皆で手分けしてパーティ会場の教室に運んでゆく。  金銀のモールや紙の飾りでクリスマス仕様になった教室は、男子が机を移動させ、青いビニールシートが一面に敷いてある。  次々に運ばれてくるケーキに小躍りになり、「さすがは奈菜ん家のお米だ」という話で盛り上がって来ると、奈菜は「お父さんの言う通り、米袋を担いだサンタクロースになって感謝されるのも悪くないわね」と、照れたように俯く。他人の賞賛を、掛け値なしで受け取ることができて、くすぐったそうだ。  ……教室に輪になり座ったみんなに、ジュースやお菓子が行き渡るとさっそくクリスマスパーティが始まる。「乾杯!」「メリークリスマス!」思い思いにお喋りしながら食べる、米粉のシフォンケーキは大好評だった。 「美味しい、小麦粉のケーキよりもっちりしているね」 「舌触りが滑らか」  様々な感動の声を聞き、望実は男子にもレシピを渡す。 「グルテンフリーだから、小麦粉アレルギーの人でも食べられるよ」  望実が直輝の席まで行くと心配そうに見つめていたが、「大丈夫。仲直り出来たよ」と告げると、安心したように手付かずのケーキを食べ始めた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加