6章 めぐる季節を、あなたとともに

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 以前ほど望実の気持ちが浮かないのは、奈菜の涙を見たせいだろうか。家を絶やすという重荷を背負った彼女を前にすると、本に載ったどんな言葉でさえも軽く感じてしまう。切なさにやるせない想いが重なって、望実は自分がいかに甘い考えでいたのかを知ったのだった。 「自分の道を見つけるって大事だよな。俺は生まれた時から決まってたっていうか、我が儘言ってたら姉貴に迷惑かかるし、家業を継ぐ以外考えてなかったけど……」  ある意味気楽だったのかもな、と直輝が小さく口にしたので、望実は首を横に振った。 「古城君は凄いと思うよ。みんなが便利な都会に出ていく中、村に馴染んで生きていくって」  ……あのクリスマス以来、宙ぶらりんになった恋心の居所が見つからなくてどうしようと、望実は溜息をついた。  時は過ぎてゆく。  もうすぐバレンタイン、それを過ぎればすぐに3年生だ。そして来年の春には望実も直輝も町の高校へ通っている。こうした気さくな関係も、今まで通りということはなくなる。  直輝はどう思っているのだろう?別れもあれば新しい出会いもある。記憶に埋もれてゆく日常の中で、会えなくて切なくなることはないだろうか。  けれど、もつれていた奈菜と直輝の関係がほどけて、まだひと月しか経っていないのだ。彼の気持ちを直接聞くことはためらわれた。  恋心は固い蕾でまだ花開くには早い。  焦る自分の気持ちだけでどうにもならない事もある。離れてしまった距離をすぐに近づいて、彼の思い出を踏み荒らしたくはない。  今の望実は、彼の心の扉をノックできず右往左往するしかなかった。
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