6章 めぐる季節を、あなたとともに

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 誰もいない雪景色で、振り返る彼。  世界から時間が消えたような、一瞬の静寂。  神様の作ってくれたシナリオが、望実の心を奮い立たせる。  勇気をだして。  彼の、本当の声が聞きたい……。 「たった二文字が孤独を変えるって、知ってる?」 「え?」  ようやく、二人は目を合わせた。  吸い込まれそうなほど真剣な瞳が一直線上にある。  心臓が熱い。 「わたし、古城君のことが…………好き」  驚いたような直輝の顔。  頬を赤く染めた望実の顔。 「ありがとう。今まですごく楽しかった、これからもずっと続けばいいなと思ってる。だから友達関係の先にジャンプしたいの」  ……お互いに、そこから先の言葉はなかった。  同じ距離を保ったまま帰る道は、身体は寒くて心が温かかった。つかず離れずの直輝の背中は、無言で望実の言葉を受け止めてくれていたから。  望実の心から、柔らかな花が開く。  ねえ、ダンテライオン。  これで彼の世界も、少し変わったのかな?
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