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学生さんらしい黒の帽子と詰め襟姿がよく似合っていて、その姿に見とれていたら、御坊ちゃまの繊細な指が私の頬に触れた。
「柔肌の、熱き血潮に、触れもみで……」
口ずさんだ有名な短歌を美佐は聞いた事がある。確か与謝野晶子だ。酷く艶っぽい歌だったと記憶している。身体の芯から熱を発して、思わず顔が赤くなった。
「なかなかに純情な子だね。そして教養もある。面白い。実に面白い」
からからと楽し気に笑って去って行った。
明るく悪戯っ子で朗らかな人。それが悠之介御坊ちゃまの第一印象だった。
ただ……明るい笑顔の中で、わずかに憂いを含んだ瞳だけが、少し気になった。
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