●二ペエジ

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●二ペエジ

 この屋敷に来て数週間。私も住み込みの仕事に慣れてきた。  旦那様が私に日誌を書くように命じられたからだろう。私の担当は旦那様と御坊ちゃまの世話が中心だ。  御坊ちゃまは実に優等生で、学校に行くとどこにもよらずにまっすぐ帰ってきたし、休日も熱心に勉強をして、ほとんど遊びにもでかけない。  旦那様が屋敷をでることはほぼない。ほとんどの時間を自分の部屋で過ごし、仕事をするか、本を読むか、時々庭を眺めるか。ただその繰り返しで、旦那様の部屋だけが、魔法のように時が止まって見えた。  正直この屋敷にくるまでは、少し怖かった。  ーー美佐。桐之院家の闇にとりこまれないように。気をしっかり持つんだよ。  祖父は真顔でそう言った。本気で孫の私を心配するように。  でも、今の所とても平和で、健全な家庭だ。
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