最終章 奇妙な同居はつづくよどこまでも。

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万里が芝生を横切り、壁際までくると、篠原はいつもと違う行動をとっていた。 壁際にある草むらにしゃがみ込んでなにかを探している。 「何か失くしたのか」 どうせ返事は来ないとわかっていて聞いてやると、篠原が顔もあげずに言った。 「万里さんに花輪をあげようと思って、花を探してるの。花輪をつくるには、たくさん白い花がいるから」 気づけば彼女の足元には、シロツメクサが束になっている。意外すぎる言葉に、面食らってしまった。すぐにはなにも言えなくて、つっかえながら聞いていた。 「どうして、万里さんに花輪をあげるの?」 「みんなが言うの。万里さんが、久美子のために怒ってくれたんだよって。だから感謝しなさいねって。だから花輪をあげて、ちゃんとお礼を言うの。お母さんが、人に何かしてもらったら、ちゃんとありがとうと言いなさいっていつも言ってるから。それだけ言えれば、大丈夫だからって」 ピンクの弁当箱は手付かずのままだ。飯を食べるのも忘れて、必死に花を探す篠原の姿に、万里は立ちつくすことしかできなかった。 万里は目の前にいると、わかっているんだろうか。彼女は。だがわかっていなかったとしても、そんなことはどうでもいい。篠原のなりふりかまわぬひたむきさと純粋さにうたれて、どうしていいのかわからなくなった。 「……万里さんも、喜ぶと思うよ」 だからそれだけ言って、シロツメクサを探すのを手伝った。
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