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プロローグ
色の無い紙粘土で形取られた街を歩く。
呵責の言葉で抉られた黒橡のアスファルトをかじる。
鈍色の空から降り注ぐ咎の雨に打たれ、鼻を突くようなペトリコールにこの世界のどうしようもない虚しさに苛まれる。
さんざめく背景は眠りについたよ。
さあ、その目でこちらを覗いてごらん。
こんなに大きくなったよ。
仄暗い流血の賛美歌と脳髄から流れるノクターンがひとりでに歩き出す。
皆が心に錠をしている。鍵なんてとうの昔に噛み砕いたはずなのに。
孤独と自嘲癖が今日もひとつ、またひとつと花開き、やるせない気持ちと、或いは嫉妬に向かって排ガスの如く立ち昇る。
残念なことに、誰しもに誰の声もが届かなかった。そんな世界に差し込む一縷の光すらも、もはや色なんて無かった。
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