プロローグ

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 残念ながら、ボクという人間にはプラモデルを噛み砕いて食べちゃうような習慣は無く、それに準ずる性的嗜好は一切ないということだけは前置きさせて戴くこととしよう。ボクは生まれてこの方、スーパーで定期的に安売りされるマーガリン以外にプラスチックのような物を食したことがないことだけは確かであり、もしもそれで誰かが傷ついてしまっているのならば、これも何かの機会だと思って謝罪の言葉を紡ぎたいと思ったり、そうでもなかったり。ボクは気分屋なんだよね。深入りした時点で湿った葉巻に火を点けるくらいの無駄を被ることになるだろうね。……そんな比喩こそが無駄だって? それをいわれちゃあ仕方がなくなる。ボクはそんな人間だからね。  まあ、そんなわけだ。実に中身のないくだらない前置きのように思えるけれど、ようするにボクはどこにでもいるありふれた子ども……農薬を食わされた歪なトマトのような残念な奴であるというわけだ。  極道の家計に生まれだばかりに流血と隣り合わせで育った、みたいな取り立てて壮絶な過去があるわけでもなく。  誰かの為に汚れ役に徹したり何かを守る為に格好良く戦ったりできるような主人公体質であるとも思っていない。  例えば軟弱そうに移ってしまう背丈の低さと中世的な顔立ちであるボクならば疑似的ショタっ子枠……或いは女っぽさを売りにしてイケメンで格好良い主人公体質の男子とラブコメを築き上げる生き方もあるのだろうけれど、生憎ながらボクにそのような趣味嗜好は一ミリたりとも存在しない。寧ろボクだって女の子を捕食したいって欲望のひとつやふたつ、あるといえばあるのだ。  そんなボクの思い描くものといえば精々、女子高生が繰り広げるビリビリタイツ感謝祭や、もしもボクがラノベよろしくの異能力を使えるとしたら、或いは大嫌いなアイツに食わせるならば芋虫よりも断然ナメクジだ、みたいなどう考えても実用性と生産性に欠けるような妄想ばかりである。  挙句の果てには、いつか現れるかもしれない恋仲に発展した女の子に捧ぐべく吐き気がするような気色の悪いセリフの羅列ウィズ、恋人に捧ぐバラードの妄想を繰り広げたり。いやあ、実に気持ち悪い。  ……とまあ。ボクという人間がおおよそどういうものなのかはそろそろ理解してもらえたことだろう。
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