プロローグ

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 ボクの住んでいる世界に色があふれるようなそんな未来があるかもしれないと思えるならば。それはきっと素晴らしいことだろう。  現実に敵わないボクにとって、夢を叶えるという行為は果たして傲慢だろうか。ボクにとっての夢は……恐らく色の溢れた世界を双眸で見据えるということに他ならない。  青春……通り過ぎてから体感するという誰もが理想とする桃源郷だ。そりゃあ、ボクだって青春を謳歌してみたかった、なんてセリフを吐かないわけでもないのだけれど、結論から言えば、ボクにはそのセリフを吐くにはまだ早いという事実が確かにあった。  ボクはまだ十五歳。まだまだ人生の軌道を修正するチャンスは転がっているはずだろう? そういう風にできているはずの社会だ。そうでなくちゃ困るよ。  そんなことを夢見てる時点で、そもそも歪なのはわかりきっていることではあるけれど。  『私立総角学園(しりつあげまきがくえん)』。富山県のとある場所に聳えている、俗に言うマンモス校といったたぐいの大きな学園である。マンモス校と呼ばれているからといってエリート達の集う人生における勝ち組の巣窟であるかといえば、そうでもないというのが結論になる。総角学園は初等部、中等部、高等部とエスカレーター式のルートを組まれているのが特徴のひとつと言えよう。中でも、中等部と高等部は第一学科と第二学科に分かれており、名門大学への進学を視野に入れている……所謂ボクなんかとは住む世界が違う努力家達が第一学科にて高度なカリキュラムを組まれ、日々勉学に励んでいるとのこと。一方の第二学科は、わかりやすく言えば優秀でない生徒の掃き溜めである。中等部で上手く実績の残せなかった生徒、元より勉強が得意ではなかった生徒、或いは単に素行の悪かった生徒。理由は人それぞれではあるけれど、エリートではなかった生徒が集っている。  高校進学を機に総角学園に入学して第一学科に仲間入りするフレンズもいれば、地元で一番近いという理由で第二学科で上等といった学力で入学するフレンズも少なからずいる。  まあ、第二学科は「総角学園というブランドを得る為だけに入学した劣等生」なんて扱いを受ける風潮があるらしいけれど。まったく、腐ってやがる。ただ、総角学園を卒業しても履歴書にどちらの学科を卒業したのかを記載する必要がある辺り、闇が光っていますわね。矛盾ではなく、本当に。
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