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 天宮は約束の時間までに食事とお風呂を済ませてしまおうと、スーパーの袋を漁りつつ、パソコンの電源を足の指で入れた。天宮にとって食事をする時に見るのはテレビ番組ではなく、ネットに掲載されているオリジナル漫画や小説、またはアニメのDVDである。  時折、適当に入ったチャットルームで話しながらということもあるけれど、そうすると食事が疎かになり、最悪食べなくなってしまうので、出来るだけしないようにしている。 「さてと、」  袋から取り出したのは肉が乗った丼ぶり飯。20パーセント引きのシールが貼ってある。そして温くなってしまった缶ビールも取り出して、天宮はパンッと手を合わせた。 「いただきますっ!」 ――――さぁ、お楽しみの始まりである。  天宮はビールを片手にマウスを操作し、ネットを開く。そして『お気に入り』をクリックして、ずらりと並んだブックマークから『ウツボの壺』を選べば、何ともシンプルな白い壁紙のホームページが開かれた。 『オリジナル小説置き場です』 『色々なジャンルが置いてあります』 『気に入っていただけるものが一つでもあれば嬉しいです』  などなど。  トップページに簡潔に書かれた言葉を見ながら天宮はクスリと笑ってしまう。  ただ見た人にとっては当たり前な文章かもしれないけれど、書いた本人―――うつぼさんを知っている天宮からしたら、相手の少し不安気な性格が表れていると分かるからである。     
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