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ほとんど拉致で千里の屋敷に連れられ、台所に連行された。
軽快に指を鳴らす千里。恰幅のいいコックがチョコやらなんやらを持ってくる。
「とりあえずなんか作りなさい」
千里は冷たく言い放つと、ここから去ろうとした。
「ま、待て待て!……何を作れと?」
千里はこれでもかというほど冷めた目で俺を見てため息をついた。
「はーぁ……やれやれ、そんな事も分からないの?ホワイトデーの練習よ。あんたが作って優香に渡すの。そんで謝るの。分かったらそうね……。とりあえず生チョコでも作りなさい。あんた前に料理本買ったりしてたでしょ?じゃ、そこそこ期待しといてあげるわ」
千里はそう言ってスタスタと台所を出ていってしまった……。
「うむむむむ……実に困った……」
千里の言う通り料理本を買った事がある、作ろうとした事がある……。
その時は料理ができる男がモテると聞いていたから。
初心者向けの本を買って開いてみたらどうだ?専門用語だらけで俺には理解出来なかった。
何が初心者向けだと窓からぶん投げ、執事の頭にクリーンヒットした。
あ、それで見送られたのか……。
一応生チョコのレシピも何度か読んだ事はある……。しかしやはり専門用語だらけだったのだ。
「ええい、言い訳してる場合ではない!男、充!やるぞ!」
俺は腕まくりをし、チョコを刻み始めた。
チョコ菓子を作る時、この作業から入るのは覚えてる。
刻んだら深い器に入れる。問題はここからだ……。
「はて、湯せんとはなんだ?」
湯、と書いてあったのだからお湯は使うのだろう。
ヤカンに水を入れて火をつける。カップ麺が得意料理だ、ここは得意分野で問題ないが……。
「湯せんのせんとは……?」
せん、セン、千、栓、選……。
俺は思いつくかぎり、【せん】を思い出す。
線、専、戦、潜……。
ん?
「これだ!潜だ!ユーレカ!我発見せり!」
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