くもりガラスの向こうには

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そいつはきっと、私を見守ってくれてたんだ。 あのお風呂とかいう、忌々しく恐ろしいものに、小さな私が飲み込まれたりしないかと。 滅多に鳴かなかったあんただけど、お風呂上がりの私には、必ず「にゃあ」と声を掛けてきた。 それは多分、地獄の釜からの生還を喜んでくれてたんだろうね。 あんたは優しかったもんね。 私が泣いてたら、そっと隣に寄り添ってくれてたもんね。 ああ、会いたいなあ、あの懐かしい黒い影に。 お風呂で溺れたふりをすれば、助けに来てくれるかな?
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