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 夏のあれだけ差し込んできた日差しは教室に入り込むことも減り、私は何度かの席替えによって廊下側の二列目の真ん中の席となっていた。暖房から遠いので冬は寒くなるのを一年生の時に経験したので知っている。  ぼんやりと空を眺めて、空に身を投げるという言葉に惹かれていた春がもう、何年も前のように思える。  あの時と同じように窓を眺めているが、あるのは透き通った空ではなく、雲がかかったうすぼんやりとした青色だ。  ずっと見ていると宙に浮かぶような気分になる。  季節が変わるように、私も、雅巳も変わっただろうか。  秋に差し掛かると、高校生活で最大のイベントといわれる見学旅行がある。一週間近くそれに費やされるために、前からグループを組まされる。  自由行動の際に遊ばないように指定された観光地を巡り、後でそれぞれ内容を提出してもらうと言われて、あちこちから文句が出る。見学旅行が終わると完璧に学校生活は受験モードに切り替わるからこそ、そこで何かしらの思い出を作ろうと必死なのだ。  迎えた当日、飛行機の浮遊感と、煩い回りに気を削がれていく。  何が面白いのがわからないのに、楽しみがるふりをずっとしなくてはならないと思うと憂鬱さは増していく。
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