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小さい頃は反抗すればするほど怒られた。言う通りにしなさいと誰もが口を揃える。言われた通りのことを、約束を、規制を守ればいいのだろうと自分という自分を放棄した。命令されるがまま、前へ倣えをしていればいい。意思なんか関係なく、規則を守れという無言の圧力に私は従っていた。
その結果だろうか、これは。
私は動けない。心も体も重い。何をするにしても、かなりのエネルギが必要だった。一番親しい友達と話してもそれなりの気力を必要とし、それ以外となると容量外となってしまう。
夜、雅巳にメールすると「こっちは同室のやつが彼女に会いに行って戻ってこない」と返ってきた。消灯時間はとっくに過ぎているので、先生にばれたら連帯責任になるだろう。それに比べて私の同室の子たちは静かだった。消灯時間まで写真を撮ったり、一日のレポートを書いたりして過ごしてはいたが、気がつけばみんな寝てしまったようだった。
寝息も聞こえる、薄明かりがついた和室で、私は雅巳とのやり取りを少し続けた。
見学旅行中であった出来事や、撮った写真も添付して送ってくれる。同級生が何をして、こうなったという話。そして、そんな彼らがこちらにピースをしている写真には、雅巳とも写っている。
彼は私にないものを持っていた。容姿も、頭脳も、友人関係も悪くない。私が言う消えてしまいたいという、薄っぺらい言葉は彼がいうものとは違う。彼は冗談っぽく死を連想させるようなことを言う。冗談のようにいいながら、本気にさも滲んでいる。
だから何かのはずみで本当に死んでしまうのではないか。
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