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私は怖くなる。あの感性豊かな彼が死んだら、私は忘れられないくらいに恨むだろう。
自分の家とは違う布団の上で肘をつきながら、返事のメールを送信して暗くなった画面を見る。
私は私の居場所が欲しかった。それは家族と別に、特別な何かだ。だからこそ、他人の中に私の存在を見つけると安心する。私はどこにもいないわけではない。私は思われている。だからできるだけ私という記憶が、いいイメージでその人に残りたい。
私は臆病者だった。他人にばかり左右されて、顔色を窺って、その雰囲気にあった言葉を選ぶ。そこに私の本音は薄くしか残らない。
何度も自分を嫌いになる。私の中にひしめいている不安と陰鬱さはそうやって存在感を増していく。
口先だけなら簡単に言えるような薄っぺらい消えてしまえたらという言葉は、形や音としての死だった。本当はもっとしたいことがある。もっと、私は。だから私は妙な行動を起こさない自信がある。けれど、雅巳にはそういう自信が持てなかった。
見学旅行は問題なく終わり、私は寒くなったと膝掛けを出す。浮かれた気分から、一気に進路という言葉があちこちで聞こえ始めた。それと同時に、無意味な苛立ちをあちこちで感じた。
友達は「みんなストレス溜まってるんだよねぇ。授業も受験対策ばっかだし」ともらす。
私も苛立つことが増えてきた。家族に対する無意味な苛立ちや、同級生や、先生らに対する不満。それと同時にここ最近になって、授業をさぼるようになった雅巳に対してだった。
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