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 入学して半年もたてば、慣れて余裕が生まれる。校門近くでは制服のチェックをかねて先生が立っているが、一年生は余裕の表情で笑いながら挨拶し、通り抜けていく。  高校三年生になってからというものの、せっつかれるように受験勉強をしろと言われて、毎日が憂鬱になっていた。新しくしたローファーの爪先を見ながら歩くことも増えた。  変わったことといえば、あの藍が私によく話しかけてくるようになったことだ。  生徒会の書記は変わらず続けているようだし、雅巳のことも注目しているのを私は知っている。  藍は、雅巳のことを危なっかしいと言う。昔からそうなの。雅巳って頭はいいけど、どこか抜けてるじゃない。長い黒髪を耳にかけ直していう彼女は色っぽく見えた。  昔からの知り合いだからか、彼女はこれでもかと昔の話を披露する。  いつのまに親しくなったのかと友達に聞かれて、私は困りながら、たまたま親しくなったと返した。  本当は、藍と親しくなるつもりなんてなかった。  藍が私と親しいふりをしながら様子を窺っているのを知っていたし、彼女のせいで雅巳と二人で話す時間が奪われてしまう。彼女はそのつもりでやっているのなら、凄いとしか言えない。私と藍が話している姿を親しいと思わせながら、私のことを敵のように思っているのを感じさせないようにしているのだから。  今までなら雅巳の話を聞いて、私の話を聞いてもらって、黙っているだけでも十分だった。付き合うとか、そういうのではない。藍は恋愛感情を確かめようとする。そのつど私は、まさか彼の隣にいたいと思ってるの、とでも言われているような気分になるのだ。
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