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二年生の後半あたりから、雅巳はたまに休むようになっている。気まぐれに休む彼のことは、先生方や生徒のなかでも話題にあがっていた。
成績優秀で、今まで真面目に授業に出ていた雅巳が何故休みがちになったのか。私も気になっていた。
彼に聞いてもただ、体調が良くなかったとか、したいことがあったとか、そういう回答しかしなかった。
休みがちになったといっても、かなりの日数を休んだ訳ではないので、先生に「受験のストレスで体調が悪くなることもあるよな」と言われたと、そう教えてくれた雅巳は悪戯を達成した小さな子供のような顔をしていた。本当はそういうのじゃないんだけとな、というように。
なら、何をしていたのか教えてくれたっていいのに。
先生は騙せたとしても、昔からの知り合いである藍は納得しなかった。理由を求めている。もっとはっきりとした理由をだ。
私はただ二人の近くに立っているだけしか出来ない。かといって立ち去ることも出来ず、重いリュックを背負ったまま二人の顔を見比べるように視線が行き来する。
一人で問題を抱えるよりも話した方がいいよ、というような模範解答じみた言葉が出るのだろうか。私は少しだけ期待していた。私は雅巳にそれを言う勇気がなかった。私のかわりに他人が言うことを望んでいた。
藍は雅巳のことが好きだということを、私は知っている。だから藍は、私が雅巳とどれだけ親しいのかを探る。そして私から聞いた内容が自分より雅巳と親しくないことを確認するのだ。
私の方がやっぱり雅巳と親しいじゃない。本音を隠したつもりの顔で微笑み、優越感に浸っている。
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