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悔しいとか、思わないわけではなかった。
藍と雅巳がこれだけ親しいなら、雅巳の願望も変化していくのではないか。私は藍に淡い期待を持っていた。藍と接していけば雅巳に、このまま死んでしまってもいいのだろうかと疑問を持たせられるのではないかと思ったのだ。
消えてしまいそう、いいや、空に身を投げると言っていた彼を、私は引き留めたかった。
藍がさらに続けるそれに、嫌な予感がした。どうしてだろう。言わせてはならないような、何かがある。
「私じゃ頼りにならない? けど、話してくれないとわからないままなんだよ。力になれないなら、なれるようになりたいって思うのが普通でしょ? 」
「ニュースで見た自殺した大学生と俺を重ねて心配になっただけだろ。別にその大学生と面識があったわけじゃないのに、どうしてそいつと俺を重ねる? 」
「どうしてって……。何も知らない秋穂だって心配するでしょ」
藍が私の名前を言いながら、腕を引っ張り寄せる。足がもつれるようにして何歩か歩き、藍の体にぶつかる。藍の顔を見たが、彼女はこちらを見ていなかった。
「お前の勝手に秋穂を巻き込むなよ」
いつもならこんな風にはならないはずだった。自分に自殺願望があることを他の人に悟られないよう、同級生も同じだという演技が上手い彼のことだから、今回も上手く誤魔化すのだと思っていた。それなのに少しずつ剥がれ落ちているような気がした。
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