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「そもそも自分中心に関わるものでしか、本当に心配なんて出来ないものなんじゃないかって思うけど」  興味をなくした、とでもいうように外へと雅巳は視線を向けていた。二重となった玄関の入り口から、黒いアスファルトが見えた。  棘のある言葉を使った本人は飄々としていた。もういいだろ、というように自分の下駄箱へ向かう。  今気づいたが、彼は上履きを脱いだ状態で藍の話を聞いていたらしい。藍はまだ上履きのままだった。  目の前に見えない線があるようだった。きっと、言われた藍もそうだろう。上唇と下唇を内側に丸め込むように閉じている。泣くのを我慢している子供を思い出させる。  掴んでいた私の腕を払うようにして離し、雅巳の方へ歩いていく。 「関わりがなくても心配だとか、悲しいって思ったって、全然おかしいことじゃないよ」  小さな声だったが、雅巳にも届いているだろう。動かない。 「関わりがあるとかないとか関係ない。私が悲しいって思っていることに嘘はないもの」 「その大学生が俺だったら、同じように悲しいって思うってことか」 「あたりまえでしょ。自殺とか死ぬとか、縁起でもないこと言わないでよ」  懇願するような叫び声だった。雅巳は上履きをしまい、自分の靴を出す。こちらを見ないまま「俺が死んだところで、ただ少し悲しいっていうような奴がいるくらいだろ」とローファーに足を入れる。  いつにもまして、饒舌だった。
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