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 所詮、夢だ。起きたばかりのころははっきり覚えていて、あの浮遊感まで感じでいたのに、今は細かくは覚えていない。それでも彼は黙って聞いていた。  自殺した夢だなんて文字と響きだけで聞けば何だか重苦しいから、雅巳以外には話せない。夢の話だし深く考えないだろうと踏んでいたが、その考えは雅巳には甘かったと後悔し始めている。  寝ぼけてない、と否定しながら言われた言葉について返す。 「私が自殺したいと思っているってこと? 」 「そういうことになるね」 「そんなはっきりいって怒るとは思わないの」  平然といった雅巳に、一瞬私は怯んだ 。たかが夢の話にそう怒ることはないだろうと雅巳も知っているように「思わない」と返してきた。 「秋穂は他とはちょっと違うからかな。怒らないってなんとなくわかる」  雅巳のいうとおり私自身、自分でも少しばかり同級生とは違うだろうと思う。同級生らは流行ものだとかアイドルについては詳しく細かい所まで知っているのに、人がまとう微妙な空気には鈍い。  対して、私は同級生を見ていてこんな事を考えているのだろうか、笑っているが機嫌は悪そうだ等とわかってしまうことだったりする。  ただ観察力が鋭いだけなのかもしれないが、その観察力が勝手に伝える何かしらの感情や空気は、私を酷く疲れさせる。  違う意見、思いをいえば空気が乱れる。女の子らはそれに対してかなり敏感だ。違うというこもは異物のように排除されてしまう。だから、何が引き金になるかわからないなら同調を基本とした方が平和に過ごせる。  もちろんそれは、私を疲弊させ、すり減らしていく。
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