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 気持ちは無くなっていく一方であった。浩太から別れのメールが来るか、私がする方が先か。その程度の違いしかない。気にしないでといいながら私が携帯を返した後も、ごめんと謝る。唇は、取り繕うような無駄な言葉を吐かなかった。  浩太との関係が冷める一方で、反対に私は昴と親しくなっていく。  その間も、私は変わらず浩太から来たメールに返事をしていた。私たちは別れてはいないから、まだ恋人という状態だ。来たメールには返すくらいの親しみはあった。恋人なら多少の下ねたの会話だって返す。私にその気はなくて、もう触れられるのも嫌だとしても、ただの文字としてなら、こういう風に返して欲しいのだろうと冷静に返せる。  私は何も知らないと思っている浩太は、もしかしてほくそえんでいるかもしれないと思うと、反抗心が芽生えないとは言えない。ただ、もういいやという諦めがあったのだ。  浩太のツイッターを知ったところで、私の日常は変わることはなかった。浩太からのメールは一日のうちに来ればいいほうだったし、私からは殆ど送ることはない。  大学内で真面目に講義を受けながら、少しずつ変わっていく女の子や男の子らを何処か遠くのことのように見ていた。  昴から告白を受けた時だってそうだ。  私はオープンスペースにいた。自動販売機が並び、その稼働している機械音を背景に昴と話していた。昴は缶コーヒーを片手にそっと息を吐くのが、何か言いたいことでもあるのだろうかと感じた。
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