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 彼の手は私の手をすっぽり隠せるのではないかと思うくらい、しっかりと逃げないように包み込んだ。  私は浩太に小さく謝る。私は浩太を傷つけたこともあるだろう。けれど、そう。貴方だって私を傷つけていた。  歩美のせいで、私は少し憂鬱になった。浩太とのことや、昴への罪悪感などが一気に思い出されている。昴はいくつか開いていた本を閉じていた、 「あれはありすぎだろう。多少話を盛っているんじゃないのか。どれも本当ならすごいことになる」  歩美は私より経験豊富なのは確かだが、話している全てが本当だとは思っていない。私は笑って「そうだね」と返す。 「歩美に経験がないって思われるのは別にいいんだけど」 「いいのか」 「豊富なことを話して得になることって少ないし」  自慢なのか知らないが、恋愛経験が多いということはそれだけ負のイメージもついて回る。歩美の印象はどちらかというとあまり良いものではない場合が多かった。  彼氏が途切れないという話は、自分はモテるのだといっているようなものだ。そして短期間で別れてしまうのは、何かあるのだろうかと勘繰られる。  けど、と続ける。  いち早く誰かの面白い話を耳にして、それをスクープ報道するように誰かに話すのが趣味なのだろう。だが、そんな面白い話はそう簡単に手に入らないから、自分から収集しようと色んな人と話すのが、歩美に友達や知り合いが多い理由なのだ。  彼女にとってその一人が私、ということである。
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