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「後ろめたいって思わなくていい。相手は俺だし、向こうは知らないままだ」  浩太が浮気をしたのは私が酷い女だったからではないか。話題に困り、会う回数も減っていった原因は私のせいではないか。  何がというわけではない。思い返せば私が悪かったのではないかと思ってしまう。浩太への不満や苛立ち、嫌な所も浮かんでくるのは悪いのは自分だけではないと、自分を守ろうとしているのがわかって、酷いやつだと思う。  今は昴の手を完全にとっているというのに、私はまだ昴に不自由をさせている。  昴が私の中で占める割合はまだ少ない。少ないままで終わらせることにはならないし、昴だって私に自分を残そうとしてくる。私は拒否しない。知らないから知っていくし、始まりはどうであれ、私の中に昴は存在し割合を増やしていく。 「それに、俺だっていい経験になったしな」 「いい経験というか、嫌な経験じゃないの? 」  好きな相手であった私には、元彼との問題があったことを知っている。彼にとってはいいものではなかったはずだ。  そういった私に「そうでもない」と当たり前のように昴は返していた。  講義が終わる時間になると、図書室の出入りも激しくなる。昴のもとに彼の友達がやってきたので、私も課題に集中するように机に向かう。握っていたシャープペンが体温でぬるくなっていた。  友達と昴が話している間に、ふと思い出したように携帯を出す。携帯にはまだ浩太との思い出が残っている。連絡先のほかに、彼専用のフォルダを作っていたメールや、写真と数は多い。いつまでも残しておいてもどうしようもない。
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