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開けた窓から心地いい風を感じた。高校二年生になった春、初めて席替えをしたあとの席はずいぶん心地よく、授業中もよく眠気に誘われる。だがこの席は嫌いじゃなかった。夏場は暑くて地獄だろうが、この時期は快適に過ごせる。
放課後、私のもとにやってきた雅巳からプリント類を受け取り、そのまま教室で友達から借りたものを先に写している途中だった。雅巳と話しているのでまだあまり進んでいない。
雅巳はそのまま教室にいて、黒板に近い窓を開けて外を見ている。高校がある周辺にはたいした目を引くものはない。
春先は無駄に走らされるグラウンドと、冬でも緑を残したままの木がいくつか植えられ、そのさらに奥にある川を隔てた先には山が見える。山へと登るには車でもいけるが、その途中にある老人ホームやちょっとした公園はここからだと見えない。彼は何を見ているのか。
「そういえば、飛び降りが流行っているらしいってニュースでやってたのを見たか」
少し前に、人気グループのメンバーが自殺したという話から始まり、ここ最近自殺する人が多いというニュースと共に流れていたのを私も見ていた。
確か、メンバーの一人が薬を大量に飲んで自殺したというものだ。ニュースはそれだけでは終わらず、そのメンバーの自殺報道の後、グループのファンが飛び降り自殺したらしい。
しかも自殺したファンは一人ではなく数人いるというニュースに、何故飛び降りだったのだろうかと疑問に思った。好きな人の後を追うなら同じような死に方をするのではないか。
「私も見たよ。けど、なんで飛び降りだったんだろうね。そのグループの人、薬での自殺だったんでしょう。熱烈なファンなら死に方も真似するんじゃないかなって思ったんだけど」
「自殺したあのグループの一人は前から、空を飛んでいる夢を見るっていっていたらしい」
身を投げたところで、落ちていくのは地面へだというのに、真っ青な、澄んだ青空を想像させていた。溶け込むような青色の空だ。
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