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 講義の予習と復習、同時に調べもの。友達と遊びにいく予定とバイト。 あっという間だった。疲れて寝れば朝だし、起きれば一日がひとつの流れのように進む。  広い講義室では後ろの方の席まで人で埋まる。この講義には昴もいるが、私は友達と前の方の席に座っているので顔を合わせることはあまりない。どの辺りにいるのかぐらいは知っているが、見える範囲に彼の姿を捉えることは出来なかった。  後ろの席にいるのは大抵賑やかな学生で、講義中でも耳を澄ますと囁き声で話している。必修の講義なんてとくに酷い。人数が増えるのと比例して、後ろの方は自由なことをしている。  後ろだとそんな学生らの声と動きで集中出来ないので、私はどの講義でも前の方の席に座るようにしていた。黒板も見やすいし、真面目な学生は質問もしやすいからという理由で前の方に固まっている。  見やすいのと集中できるのと、ただそれだけだった。けれど私だっていつも集中しているわけではない。講義とは違うことを考えているだけの日もある。  講義が終わっても人がまばらに残っていた。後ろの方で派手な笑い声がしているし、真ん中あたりにも人がいるようだった。  次の時間にこの講義室は使われないので、残っていても問題ない。友達らがそれぞれバイトやデートへ行ったあとも、私は席に座ったままでいた。家で片付けるよりも、ここでやれることをやってしまおうと、チョコレートを口に放り込んでノートを整理していく。  成績はもちろんテストの結果が大半だろうが、中には課題の提出具合やノート提出も多少のポイントもして評価される講義もある。いくらかでもポイントを稼ぎたかった。
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