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 何も私のことを知らない。私は彼女に何かを言うつもりはないから、そのままだ。だから誤魔化すように「高校時代の友達のことを思い出しただけ」と言った。それだけでも歩美は色々と想像しているようだった。何か探ろうとしたが、結局時間切れとなったようで、歩美は別れ話をしに講義室を出ていく。  私が今思うのは浩太のことではなく「クリスマスはデートしよう」と宣言した昴の荒れた唇や手のことだ。唇にリップクリームをちゃんと塗って治せば、キスした時の感触は柔らかくて気持ちかいいだろうし、保湿された手のひらはよく私の肌を辿っていくのではと想像する、  面白味もなく、真面目だと思われている私に、昴はそんな欲求を抱かせた。
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