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 友達から借りたノートを写す間も、雅巳は最前列の席の椅子に座り、窓に腕を乗せて外を見ていた。こちらに背中を向けている。私が写し終わるまでここにいるつもりなのだろうか。  部活の声が聞こえ、冷たさを残した風から、土が湿った後のような匂いがしていた。ずいぶんあたたかくなったと実感する。つい最近まで雪が雪が溶けかけのアイスクリームのように道端に残っていたのに今ではほとんど無くなっている。  雅巳にどんな理由があって死に近づいているのか知らない。死にたいから、消えたいから、確かめたいから、飛びたいから。理由はいくつでも作り出せる。  一過性のものだとしても、苦しい。  白っぽい雲が薄く伸びたような空に、騒がしさが耳に届いてくる。けれどここは私と雅巳しかいない。  脱力感。高校生にもなると先が見えてしまっていて、何が面白いのかわからない。 自己中心的な浮かれ気分の他の同級生たちに後ろから蹴りをいれてやりたくなる。お気楽なやつらと思う一方、楽しめる彼らが羨ましかった。  季節は春だった。まだ私にも、雅巳にも、青い空がはっきりと見えていた。
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