0人が本棚に入れています
本棚に追加
今日も地味な嫌がらせをして奴は存在を主張する。
大学の授業を終えて帰るといつもこうだ。
俺はハイテクな現代において、出来る限り前時代的な生活をしてみようと都心から電車で一時間ちょっとの田舎のさらに山の奥の小屋で一人暮らしをしている。
いや、一人暮らしをしようと思っていた。
しているつもりだった。
水はポンプ式の井戸水。
電気は来ていないので基本は暗くなったら寝る。どうしても活動しなければならない夜は蝋燭に行灯で宿題をする。
携帯電話は仕方なしに持ってはいるが、昼間のうちに大学で充電しなければプッツン切れてお陀仏だ。
でも俺は楽しい。
それなのに、台風の日には冗談じゃなく壊れそうなこの小屋には変な客が来る。
そいつは俺の靴と同じくらいの大きさの鬼だ。
鬼は俺の自作の湯飲みを右から左に移動させたり、トイレットペーパーをホルダーから抜いて床に置いたり、雨の日に窓を開けたりする。
もしかすると、この小屋は奴の棲み処だったのだろうか?
そうすると、これは新人いじめかもしれない。
どちらにしろ俺はこの暮らしが気に入っているので出ていく気はない。
長い戦いになりそうだ。
まぁ一つ屋根の下で暮らしているのだから、ご飯くらい分けてやらない事もない。
本当に変な奴と暮らすはめになったもんだ。
最初のコメントを投稿しよう!