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 僅かに開いた窓から、甘い春の風が病室へと入り込む。薄桃色のカーテンは微かに揺れて、体重計の針がカチャンと動きを止めた。 「体重、三キログラム。明日の晩は新月ですし、残念ながら……」  よれた白衣を雑に着る老医者は、分厚いメガネを掛け直しながらそう言う。 「そっかぁ。ついに明日、星になるのかぁ……。なんだか、実感湧かないね」  君は体重計からトンと降りた。入院中にただ短く切られた髪が、ふわりと揺れる。着地音に重みはない。 「天灯、良いの作ってよね」 「…………うん」 「そんな顔しないで。私、あなたの笑った顔が好きになったんだよ」  俺は手の甲で涙を拭って、少し滲んだ視界を明瞭にする。 「天灯、思い切りいいの作るよ」  溢れそうな悲しみを飲み込んで、無理やりに口角を上げる。あぁ、きっと今の俺は酷い顔なんだろう。 「うん」  けれど君は大きく頷き、にっこりと笑うのだった。
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