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序章
波の音が聞こえる。今日は少し、大きな音だなと、僕は思った。
小さい頃、僕は海の近くの家に住んでいた。といっても、田舎ではない。大通りに出れば、大きなショッピングモールだってあったし、飲食店もたくさんあった。
僕の家は、大通りから少し離れた所、海に面したマンションだった。そこに、家族皆で住んでいた。
僕は、自分の家の窓から、海を見ることが大好きだった。今思うと、水の質は決して良かったわけではないけれども、幼い頃の僕は、その海がキラキラと光って見えたのだ。特に、夕焼けと海のコラボレーションは最高だった。まるで、有名な絵でも見ているかのようだった。その光景を、僕はじっと見ていた。
「綺麗だね」
僕はその時、誰かに話しかけていた。あれは誰だったのだろうか。僕くらいの背丈の、誰か。
とにかく僕は、その誰かと一緒に、いつも夕焼けと海を見ていた。なぜだろうか、一緒に夕焼けを見ていたはずなのに、全くその人の顔が思い出せなかった。あの当時、僕はまだ5歳くらいだったから、記憶が曖昧なのも仕方が無いかもしれない。
「綺麗だね」
僕がそう言うと、その人は決まって、こう返していた。
「そうだね」
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