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少年は見上げていた顔を少女に戻し、少女の必死の想いを短い言葉で受け取る。少女の顔は夕陽に負けないくらい真っ赤になっていた。その瞳にはほんの少し涙らしき滴が浮かぶ。
「好きです、先輩!」
一度言うと大胆になれるのか、次は大声で叫んでいた。少年は静かにうなずく。
「……ありがと。嬉しい 寒気をはらんだ風が学校の屋上を通り過ぎていく。影が日本、細長く伸びる。ふもとの街並みにぽつぽつと光が生よ」
「じゃあ……」
すでに泣きそうになっていた少女はかわいらしい笑顔を浮かべる。今までの努力がすべて報われたような安堵した笑顔だ。しかし、その笑顔に少年は少し罪悪感を覚える。
「……でも、ごめん」
「えっ!?」
唖然として、少女は笑顔のまま固まってしまう。少年は悲しそうな、困っているようなあいまいな表情を浮かべる。
「その……僕を好きになってくれた気持ちは素直に嬉しい。でも、悪いけど、僕は付き合えない」
少年は言いたくないけど、言わないといけない言葉を胸の痛みを感じながら静かに紡いでいく。少女の足元に一滴の雫が落ちてシミをつくる。
「それは私が……」
少女は震えた声でしゃべろうとするが、途中からは言葉になっていない。
「違うよ。君のことはかわいいと思う」
「じゃ、じゃあ、他に……好きな人でも……いるんですか?」
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