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第一章
多くの生徒がとっくに葉を落とした桜並木の坂道を登っていく。ある者はだるそうに自転車を押しながら、またある者たちは楽しくしゃべりながら、またまたある者は寒そうにポケットに手を突っ込みながら歩いている。体育祭も文化祭も終わり、今年の学校行事も残っているのは期末試験くらいだからか、それとも寒さのせいか、どことなく侘しさが漂っている。
「先輩、おはようございます」
「ああ、おはよう」
後ろからかけられた元気な声に振り向きながら、宮前(みやまえ) 仁人(きみひと)は自転車を押している手を片方だけ離して応える。そのついでに落ちかけていた左肩のスポーツバッグをかけ直す。
身長、百七十後半。スポーツ刈りの短髪がツンツンと天に向かって立ち上がっている。制服の上に何も羽織ってこなかったことを少し後悔している。
「はぁ」
仁人は坂の先を眺めるとため息を漏らす。枯れ葉をさらうことに専念する風が仁人の体温も奪っていく。身震いした後、仁人は生徒の流れに乗ってゆっくりと坂を登っていく。
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