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歩道を歩きながら携帯にぶら下がっているストラップに話しかける。俺の嫁、ライトノベル『月雲(つくも)と機械魔法』の主人公、御影(みかげ) 月雲(つくも)ちゃんのストラップである。もちろん月雲は何も語ってくれないが、優しく微笑みかけてくれる。
そう、俺――高峰(たかみね) 仁(じん)はいわゆるヲタクである。別にそれを隠すつもりはないが、公言するつもりもない。誰に迷惑をかけているわけでもないし、ただ自分の好きなかわいい美少女たちで身の回りを固めているだけなのに、クラスメイトや知らない他校の生徒、どこの誰かも分からない赤の他人まで蔑んだ眼で俺のことを見てくる。
好きなもので身の回りを固めるのは極自然なことだろ?
女子高生もかわいいものが好きだから、携帯電話をラインストーンでデコレーションしたり、ピンクの小物を持っていたり、かわいいかすら判断が付かなくなったよく分からないぬいぐるみをつけていたりする。
それと何が違うというのだろうか。だらりとしたクマのストラップと月雲のストラップに違いなんてない。どっちも実在しないキャラクターじゃないか。なのに、世間の目は冷ややかである。
「誰も分かってくれとは言わないが♪」
小声で、前を歩いているカップルに聞こえないように小声で歌ってみる。ちなみに、カップルの馬鹿としか思えないような会話はこちらまで筒抜けである。後ろ姿の制服を見るに同じ高校だろう。俺にとってはどうでもいいことだが。
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