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セカンディラードは自らを支える魔物である片腕を横目に、何度も繰り返す疑問を考えていた。
違うな。私はただこの場所に、厄介払いされているだけなのだ。
突然の事だったので、今手元で疲れて寝ている少年の頭を撫でつけながら……片付きつつある夜のざわめきに暗い目を投げた。
「……けしかけたんじゃぁあるまいな」
「そう思われますか?」
赤い髪に、青い瞳。人としてあり得ない色彩を持つ、精吸鬼と森貴族種の混種というダルクはいたずら少年のような邪気な笑みをたたえて振り返る。セカンディラードから睨まれ、微笑みを苦笑に変えた。
「前から境界突破を図る子鬼群があったのは、前にご説明したと思いましたが」
「今日、今でなくてもよかろう」
「その都合は測りかねます」
どうだかと、セカンディラードはそっぽを向く。
この青年は……出会った頃から姿を変えない。当たり前だ、人間とは違う。この男は魔物だ。
セカンディラードはあまりにも人間らしく振舞うこの、有能な片腕に対し、常にそのように注意を喚起する必要に迫られていた。そこらへんの人間なぞより信頼が置ける。礼節を学び、気配りに長け、他の魔物との親和能力が主よりも高い上に信用もある。
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