N&SinMFC 説話 『灰色の不自由』

13/13
前へ
/13ページ
次へ
 セカンディラードにはそのあたりの理屈はよくわからない。愛しているなら愛していると言えばいいのだ。なぜいつもくだらないいたずらをしてこちらを困らせる必要がある。  セカンディラードは彼女を愛している事を素直に伝え、そしてニルスもそれに答えた。  しかし……病弱な彼女はセカンディラードの腕に抱かれる間も無く消え行った。  病弱だった事は知っていたのだから予測しなかった訳ではないが、あまりにも突然で……。  代替えが欲しくて。  理由。理由が無いと好きにも出来ない、何とも不自由な身分だ。  セカンディラードは、ニルスと同じく灰色の少年に、自分のマントを掛けてやる。  本当は、飼いたいのではないのだ。  代替えとして素直に、愛している。  ダルクに鎖が必要なのかと疑問に思うのと、少しだけ似た気持で思うのだ。  たとえこの少年が『魔物』であれ、縛るものなど必要であろうか?  たとえいずれ少年が牙をむいても、おそらく愛ゆえに。  鎖を引いて首輪を絞めて、命を奪う事も、傷つける事さえ自分には出来そうにもないというのに、と。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加