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「飼うとなるともなれば、それ相応の理由が無くては。余計な詮索を受けぬ為にも、はっきりとしておかねばならないかと」
「ばかばかしい事だ、私が飼う事と、私の持ち物であると主張するのにどれだけの違いがある」
「貴方の持ち物である事に人々は、安心するのです」
主人は無言で書き上げた手紙を丸め、銀細工の施された皮の筒に入れると手早く封をする。
それを横に控える青年ダルクに差し出しながら言った。
「人々にとってお前と『あれ』とに違いなどない。だが私の中では確実に、違うものだ。もしかすればだから私は『あれ』を飼いたいと言ったのかもしれん」
「反対する気はありませんよ、……ただ」
「ただ、世間に向けては理由が必要、か」
手紙を恭しく受け取った青年を横に、主人は机の上で手を組んだ。
「……今更何も恥らう事は無い。私は飼う、そのように伝えればいい」
「よろしい趣味でと、からかわれる事になると思われますが」
僅かに青年が苦笑を洩らしたのを主人は鼻で笑う。
「ふん、だろうな。だがそれも元々だろう。私は魔物を飼う者、今更人間の一人や二人、飼ってみて何が悪い」
*** *** ***
魔物使いセカンディラードは、その広い屋敷の敷地に恐ろしい程の数の魔物を所持している。
飼っているなどと、誰も言わない。
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