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去っていこうとするボーイに頼み、椅子を持ってこさせる。
「座れ」
「……うん」
腰の位置が届かないらしく座るのによじ登ろうとするのををつまみ上げて、セカンディラードは少年を座らせる。
足が床に届かないから、白いタイツにエナメル製の花があしらわれた足をばたつかせた少年をセカンディラードは一瞥。
「落ち着きが無い」
「……むぅ」
少しむくれる少年の前に、ジャムの乗ったクラッカーを持ってくると、途端その目がぱっと変化する。
手を伸ばそうとするのを左手で叩き落とすセカンディラード。
「口をあけろ」
「自分で食べれるよ?」
「必ずこぼす、手を汚す」
断定でものを言われて少年は頬を膨らませた。
「では、食べなくていいのか?」
遠ざかったクラッカーに少年は悲しそうになりながら口をあけた。
椅子の上に腰と、両手を付いたまま喉を伸ばす。
薄い上等の皮で作られた灰色の手袋を脱ぎ、素手で口に運ばれる食べ物を一口で口の中に入れる事が出来ず、少年は小さな口でクラッカーを噛む。
パラパラと崩れ落ちる欠片は、少年の顎の下に広げられていた布で拾われ、口の端に付いたジャムを舐めとろうとする前にぬぐわれてしまって眉をひそめる。
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