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舌なめずりなどはしたない、またそれかと口の周りを拭われながら少年は不服そうに口をあける。
餌をねだる雛のように、その様子にセカンドは仕方なく右手のクラッカーの残りを少年の口に運んでやった。
「あらあら、」
その様子が、どうも人の目を引いていた様だと気づくのにセカンディラードは遅れた。
いつも不安そうな顔しか向けない婦人や、幼さの残る淑女達が明らかにいつもと違った好奇の目でこちらを伺い、口元を押さえて笑みをこぼしている。
それが自分ではなく、自分の飼う少年に向けられているのだと知ってセカンディラードは少しだけ戸惑ってしまう。
「かわいらしい子ですこと」
しかしふっと棘のある言葉が背中に掛かる。途端戸惑いは軽い嫌悪に代わり、ゆっくりとセカンディラードは振り返る。
「ネス、」
「その名でお呼びにならないでくださる……?」
幼い少女はつんと鼻を持ち上げ、澄まして少年にあわせ屈み込んでいたセカンディラードを見下した。
「何なの、その子は」
「ランバルトお嬢様、見ての通り私の飼う愛玩動物です」
テーブルに用意された布で手を丁寧に拭い、セカンディラードは一度立ち上がりそれから丁寧な礼を少女に向けた。
「……気持ち悪い」
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