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一瞬宿した苛立ちを閉じた瞳の中に閉じ込めて、セカンディラードは騒然としたパーティー会場を見回す。
「どうやら私の仕事のようだ」
大きくもなく、かといって呟きでもない。
独り言のようにセカンディラードはそう言って、きょとんとした顔でこちらを見上げている少年を抱きかかえた。
「失礼、」
少しだけ早足で、しかし決して品格は失わない足運びで。
セカンディラードは誰にも見られない所で疲れたため息を洩らしながらパーティー会場を後にするのだった。
*** ***
時と場所を選ばずに、人の設けた境を越えて来るモンスター達。
それを境界の向こう側に追い返す、それがセカンディラードの仕事だ。
最北の町ミストランを維持する領主という肩書きは、すなわちその一言に集約する。町としてを維持するとは、そこに住む人々を統治する事よりもまず、そこに住む人間を守る事が第一であるのだ。
魔の大地、北方と西とを隔てる境界を守る魔物使い、彼は魔物を魔物を使ってやり込める。
忌むべき存在を支配下に置き、その巨大な力でもって魔を退ける。
恐ろしい事ながら彼は『魔物使い』としては飛び切りに優秀であった。
ゆえに最北の領主としての肩書きを与えられ、トライアン国北方の鉄壁としての信頼を置かれている。
だが、それは信頼なのだろうか?
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