五月

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2 ゴールデンウィークから、香音と礼恩は親しくなった。 絵という共通の趣味。 礼恩が画集を沢山持っているから見に来るかと提案したことが始まりだ。 『王子様』の礼恩からの提案であったことも嬉しかったが、香音はそれ以上に沢山の画集を見られることが嬉しかった。 ゴールデンウィークの最終日に礼恩の家に遊びに行った。 その家は社長の家とは思えない普通の一軒家だった。 「礼恩くん家ってお金持ちじゃないの?」 玄関先で顔を合わせるなり、そう呟いた香音に礼恩は苦笑する。 「多分、お金持ちの部類だけど、父さんはそんな贅沢は苦手なんだよ。一代で築きあげた人だからね」 「そうなんだ」 少しだけ期待していた香音は顔に出さないようにそう返した。
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