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春はピンク。
桜の色も少しだけ温かい風も街を歩く女の子の頬もそう。
冬に溜め込んだ明るさが、景色を明るくする。
私の背中には赤いランドセル。
こいつとは五年目の付き合いとなる。
私は五年前、どんな子だったろう?
そんなことを思う春。
私の彼は中学に進学した。
もう少し早くに勇気を出していれば、水色の夏も油絵みたいな秋も真っ白な画用紙みたいな冬も、もちろんピンクの春も一緒に学校に通えたかも知れない。
『もしも』なんて、過ぎ去った時間を悔やむ時に出る言葉だよなんて、お父さんが哲学者ぶって言ってたけど、そんな『もしも』が夢を与えてくれることってあると思う。
これは、私『桃田 香音』と『空井 礼恩』の恋の記録である。
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