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出会いは四月。
それは一年前のことだ。
空井礼恩が、桃田香音の通う小学校に転校してきたのは、香音にとって青天の霹靂というものだろう。
光を浴びて赤く反射する柔らかな髪。吸い込まれそうな白い肌。眼鏡の奥に見えるのは色素の薄い透き通るような瞳。
学校の女子たちが礼恩の容姿に声をあげる中、当の礼恩は静かなものだった。
誰よりも早く学校に来て始業まで参考書とにらめっこをし、放課後は塾に通うため早々と下校する。
誰ともつるまず、既に勉強漬けの毎日。
礼恩に『つまらない子』というレッテルはゴールデンウィークを待たずに付けられた。
礼恩にそのレッテルとは別に『王子様』というあだ名を捧げられた。
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