五月

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自宅まで途中にある喫茶店に向かう二人。 絵画展の影響なのか、通りはいつもより人が多い。 その中を楽しそうに語らいながら歩く母子に声をかける者があった。 「Excuse Me」 香音は固まる。母も固まる。 外国人に語りかけられても二人は全く英語が出来ない。 固まる二人に困った顔をする外国人。 その時に、香音の横に立つ影があった。 「どうしたの?」 学校の『王子様』礼恩だ。 「何か聞きたいみたいだけど、私たち英語出来なくて……」 「分かった」 礼恩は、そう言うと外国人に英語で語りかけた。 「この子、すごいね……」 香音の母が、そう呟くのも無理がない。 笑顔を交えて、外国人と会話する礼恩は、香音にとっても別世界の住人に思えたら。
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